Interview With

Yasuo Kanemaki

Director of the Japanese Super Metroid commercial
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SHINESPARKERS :
金巻様、お話しさせていただき、誠にありがとうございます。一先ず、自己紹介いただけますでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

私は、金巻康朗 Yasuo Kanemaki と言います。 スーパーメトロイドのCMを企画、監督した日本のCMディレクターです。

SHINESPARKERS :
日本で放送された1994年のスーパーメトロイドライブアクションCMを監督担当したことですね。メトロイドファンの皆さんから非常に好評だと伝えていただきたいです。
当時そのプロジェクトの取り組みはどういう感じでしたか?
YASUO KANEMAKI :

この仕事は、競合プレゼン planning competitionで決まった企画です。広告会社数社が
企画を出し合って、クライアントがこの案に決定したわけです。
企画意図は、ゲームのC MというよりSF映画の予告編のようなものを作ろうとしました,
個人的には、古いアメリカのSF映画「this island earth」etcへのオマージュでもあります。

SHINESPARKERS :
CMでは、ゲームのプロローグがSFドラマ化されました。プロダクションを備える為、任天堂からどのくらいスーパーメトロイドのストーリーを提供されましたのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

企画するときにクライアントから貸し出されたゲームをやって、ストーリー内容を理解しました。

SHINESPARKERS :
任天堂からどのくらいクリエイティブコントロールをもらいましたか?
YASUO KANEMAKI :

キャラクターデザインをもらい、実写化するのにその質感、動き、鳴き声、サムスの足音などを協議しました。宇宙生物研究所はゲームのプロローグ画面のデザインを参考にプランを立てました。キャスティングはこちらに一任され、OKをもらいました。

SHINESPARKERS :
撮影はどこで行ったのでしょうか?いつでしたか?
YASUO KANEMAKI :

東京の映画スタジオです。1994年の2月だったと思います。大変寒かった記憶があります。

SHINESPARKERS :
ゲームショップで流れていた プロモーションビデオでCMに出ていなかった映像をご存じですか?もしかしたら、CMの少し長めのカットがあったのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

CMで使ってないカットも幾つか撮りました。プロモーションビデオで使ったことも承知してます。

SHINESPARKERS :
ほぼのいちのインタビューでリドリーの合板でできた手は火工術事故で燃えてしまったと聞きました。覚えている限り、どうやって火がついたのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

撮影には許可を取って火薬専門技師 pyro technicianに依頼して行いました。リドリーは予算の都合でカプセルを掴む脚だけを作り、全体像はセットの壁に映るシルエットで見せるつもりでした。そのシルエットを出すために合板で形を作りました。火がついたのはスタジオの天井から吊るしたこの合板で、原因は小さな粉塵爆発 Dust Explosionです。崩壊する研究所の迫力を出すために使った細かい粉が酸素を含み引火したものです。火はすぐに消されました。

SHINESPARKERS :
CMで流れたスーパーメトロイドのテーマは特に素晴らしかったですね。どなたがアレンジしたのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

名前はわかりません。CMの作曲家ではなく、ゲーム音楽を担当した人がCM用にアレンジしたと記憶してます。

SHINESPARKERS :
CMで使ったフィギュア、プロップ等はどうなっていたのか?
YASUO KANEMAKI :

フィギュアとプロップはそれぞれ担当が違います。撮影終了後、フィギュアはストップモーション撮影を担当した会社で、プロップは特殊造形の会社が引き取りました。1年ぐらい保存が義務化されてますが、その後はわかりません。

SHINESPARKERS :
確かに日本向けのCMでしたが、サムスと科学者はみんな外国籍俳優さんですね。特別な理由はあったのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

宇宙生物研究所という設定から、登場人物は国際的になるのが当然だと考えました。日本人も入ってますがわかりにくいかもしれません。サムスはスタイルの良さ、タフなアスリート感を重要視して決めました。

SHINESPARKERS :
サムスを演じた女優さんはどなたでしたか?サムス以外の俳優さんの名前も覚えてますでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

出演者の名前はわかりません、忘れました。(もしわかっても本人に確認が取れないので残念ながら個人名は明かせません。)サムス役の女性はモデルさんです。実は第一候補は他にいて、そちらはもう少し可憐な顔立ちで、ハードな動きとのギャップがいいと思っていましたがエージェントのミスで出演できなくなり、第二候補になりました。しかし彼女のクールなところもこれはまた別の良さが出ました。特に彼女の走り方が素敵です。しかしゲームをする人によってサムスのイメージは違うと思い、顔はシルエット気味にしたり、カットを短く使って、想像が膨らむように心がけました。

SHINESPARKERS :
サムスのパワードスーツはコスプレではなく、特撮とストップモーションフィギュアでしたね。コスチュームより、なぜその方向で決まったのでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

ゲーム画面に登場するサムスの姿を裏切らないようにフィギュアのストップモーションアニメにしました。コスプレのパワードスーツでは演じる人の体型によって制約が多く、あのウエストで考えると、仕上がりは相当イメージが違うと思います。予算もクオリティを求めるとコスプレの方が高くなります。

SHINESPARKERS :
あのCMの中で、特に誇りに思っているところはありますでしょうか?
14 スーパーメトロイドCMの撮影で学んだこと、今後のプロジェクトで役に立ったものはありますでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

2つの質問をまとめて答えます。
注目してもらいたいのは、ベビーメトロイドの造形です。ゲーム画面の2次元のキャラクターを
三次元の立体に実写化するのは挑戦でした。苦労したのは私ではなく特殊造形のスタッフですが、クライアントからその質感や動きを聞いたときには、自信がありませんでした。
半透明の表皮に覆われ、内臓と牙のようなものを持ち、液体の中でクラゲのような動きをする。
これでは造形物の中に仕掛けをするのは無理。柔らかい素材を透明の糸で操演するしかありません。
撮影当日まで完成のチェックができませんでしたが、初めて見た時は感激しました。この世に存在しない生き物を初めて見た思いでした。ところが、シリコン系の素材で作ったこの生き物は、
液体の中で動かし続けると、素材が溶けて操演の糸が外れて動かなくなったのです。修復しながら撮影をするのですが、液体に入れて20分が限度でした。素晴らしい造形でいろいろなカットを撮りたかったのですが最低限の必要カットを取って終わりました。完成したCMからは想像できませんね。

もう一つは、予算節約のために考えたフレキシブルな美術と撮影方法です。ビジュアルのメインになる、ベビーメトロイドの研究装置はしっかり作りましたが、それを取り囲む研究所は、いくつかのSF映画風の装飾を施した壁の大きなパネルを作って、これをカットに応じてカメラ前に組み上げるというものです。研究所全体を撮すロングカットではあえてスタジオの床をそのまま使い照明の配線も意図的に見えるように置いて、研究器具の一部の様に見せかけ、壁もスタジオの壁を生かしながらその前に、例のパネルをレイアウトして奥行きを出しました。同じパネルを使い回してサムスの基地や変身ブースも撮影しています。予算も節約されましたが、大切なことは、見る人がそれで安っぽいセットに見えないことです。お金をかけなくても表現技術を駆使すれば見る人のイマジネーションを膨ら増すことができる。ということです。

SHINESPARKERS :
金巻様、改めてご参加させていただき誠にありがとうございました。ファンの皆さんに、お伝えしていただきたいメッセージはありますでしょうか?
YASUO KANEMAKI :

スーパーメトロイドのCM、30年も前の作品を評価してもらい、大変嬉しいです。
観ればわかるように、作っている方が楽しんでいる作品です・。
皆さんが気に入っているなら、忘れないで時々思い起こしてください。

“ 人間は、自分の大好きなものを忘れてしまったら、おしまいだ ”
マクシム ゴーリキー「どん底」より

© 2023 Roy Collins and Yasuo Kanemaki
Special thanks to Antoine Fantys, Wata Ridley, Naohiro Hashimoto, Quadraxis and Darren
Interviewed on 25th September 2023